# 007
KENJI SEKINE
September 15, 2014

GENRES
国際協力環境
人と人を繋いで社会の課題を解決
今年はピースデーの9/21に横浜で行われる国際平和映像祭。
Reported by Asako Toyoda
めちゃくちゃ泣かれて「死にに行くの?」って言われて
— それで実際に行くって凄いですね。でも引き返すってやっぱり恐怖はあったんですか?
片腕くらい撃たれてもと思ってましたけどね。
— 何を感じたんですか?その国境付近で。
イラクに行く中継地点のヨルダンのバックパッカー宿で、滞在した人の日記を読んでいると、相当状況が悪化していることが分かりました。バクダッド行きの車はほとんどが襲われ、拘束されて人質になるか、盗難に遭うか、当時日本人の外交官が殺害される事件もあり、どうなるかわからない危険な状態だったので、断念しました。自分は無鉄砲だけど、限度はあると(笑)。
— そうですね。死んでしまったら何も活動できないですしね。その時ってもうお子さんいたんですか?
いた!!行く一週間前くらいに生まれたのかな。
— えーー!!!!それ奥さん許したんですか?
いや、めちゃくちゃ泣かれて「死にに行くの?」って言われて、いや、俺幸運だから大丈夫って。
ただちゃんと情報調べて、やばいと思ったら行かないからって約束して飛び立ちました。だからヨルダンとイラクの国境で帰ってきた。
帰国してしばらく後に、日本人の男性が拘束されて殺害されてしまった時は、自分の事のように辛かったですね。同じホテルに泊まって、同じバスに乗って、同じルートで国境まで行って。僕はそこで引き返したけど、彼はそのままバクダッドに向かってこんなことになってしまった。戦争っていう状況こそ人が作ってるよね。もちろん一つの理由じゃなくて、色んな複合的な理由によって戦争が起きてるんだと思うんですけど、冒頭の話の通り、人が起こす事は人が止められると思うんです。
今まさに絶望したいのは現地の人達であって、外から行った日本人は日本に帰れる、この落差はとてつもない
— そうですね。戦争や紛争の問題解決のための活動は辛いことも多いと思いますが。
今本当に辛いのは現在の世界の紛争状況ですね。先ほど、僕の現体験はガサ地区に行ったことと言いましたけど、つい数時間前にそこで大規模な空爆がありました。1999年に初めてガザ地区に行って、今もう15年経ったんですけど、この15年で最悪な状況になってしまったんです。
多くの紛争が、散発的に2週間戦ったら終わりとか、数日戦ったら終わりだったのが、最近長期化してるんですよ。ウクライナもガザ地区も、それからシリアもこれまで市民が18万人亡くなってます。
数字で言うのは簡単でも一人一人の命だから、一人一人のその家族、親戚、友達がいて、その一人が亡くなる事で大変な心理的なインパクトがあって、それが18万詰まっている。だから、やりきれないですよ。その後も度々パレスチナやガザ地区は訪れてるんですけど、行く度にやっぱりひどい現実を知って毎回絶望して帰ってくる感じなんですよ。現実を知り、何が出来るのかを探りに行っているわけなんだけど、帰ってくる頃にはそのあまりにもひどい状況に落胆して帰ってくる。でも、今まさに絶望したいのは現地の人達であって、外から行った日本人は日本に帰れる、この落差はとてつもない。普段幸せに、平和に生きている我々は傷ついている人達に対して、やっぱり希望をもたらすような事が出来るだろうし、やっぱり少しずつでもやっていかなきゃいけないと思う。どんなに状況が悪化したとしても、そこはもう淡々と、出来る事をやってくしかないと思ってますね。
— そういう現体験があって、ガザの現状を見て、今こうやって活動されていて、そういう中で今自分がやりたい事を出来てるなっていう実感とか、充実感みたいなものはありますか?
今でいうと、すごく焦ってますね。充実感とか、なんかそういうやりがいを感じるってものじゃない。
すごい難しいんですけど、どうしたらいいんだろうっていう感情のほうが強いですよね。「わーい。やりたい事が出来てる!!」って、そんなハッピーなものじゃないですね。紛争解決、戦争をなくしていきたいっていう事を実現したい者としては。だって状況悪いんですもん。今もガザで何週間も空爆が続いてる中で言うと、やっぱり同じく悲しみますよね。
— 長期化する原因について何か思いつくことってありますか?
逆になんだと思いますか?
— う〜ん・・・短かったら結局何も変わらないから、変えたい人達が粘る?
それだけ戦力を持ってしまったとか。尽きない戦力を。
長期化すればするほど、和解もしにくくなるのかもしれないですよね。
— 後に引けないってことですか?
後に引けないって状況なのかもしれないですね。
人々の心の在り方は良い方向に変わってきている
— 15年間で今最悪の状態だっておっしゃいましたけど、15年間で関根さんとたくさんの人が平和の為に時間と労力を費やして、改善された事はないですか?
日本に限って言えば、社会的な事に対して問題意識を持って何かしたいって思う人達、行動する人達がかなり増えたと思いますよね。僕が会社を作った12年前と比べたら社会の雰囲気が格段に違いますね。広島の土砂災害にしても、無数のボランティアが集まって、自然発生的に物も人も集まってくるし、土砂の撤去作業したり、これはもう劇的な変化って言っていいんじゃないですか。将来社会の役に立ちたいと言っている子供が増えてるって統計もあるみたいだし。だから戦争・紛争の状況という意味では現実は悪くなってるけど、人々の心の在り方は良い方向に変わってきている。それが良い形で繋がっていけばいいと思いますけどね。
— そういう社会貢献に興味がある人ってたくさんいると思うんですけど、なかなか踏み出せない人にアドバイスというか、こうしたらいいんじゃないかってありますか?
難しい質問ですね。最初に言った通り、体験がないからやらないだけだと思うので、僕はもう体験作りを一生懸命やりたいなって思っています。ユナイテッドピープルの映画を見たら何かをしたくなるっていうのをやりたいですね。やりたくない事はやれって言ってもやらないじゃないですか。ボランティアって自分がやりたいからやるもの。自然と足がどこかに向かっていく状況作りがすごく大切だと思うんです。冷静に考えたら、自然を守る事も平和を守る事も、自分の為になるし、自分の友達の為になるし、子孫の為になるから、やるんですよね。でも目の前の事に一生懸命だと周りが見えないから、関係ない。