# 030
TIZIANA ALAMPRESE
March 02, 2016

GENRES
文化福祉
この想い。つながる、ひろがる。
社会貢献の意識が高いヨーロッパ企業の先進的な取り組みは、ティツィアナさん個人の信条とも重なるところが多い。特にLGBTの啓発活動を、企業としていち早く取り組み始めたのは、ティツィアナさんの功績によるところが大きいそう。ブラインドサッカーへの支援もサッカー大国イタリア発の企業ならでは。
Reported by Editor Remi

— 最近、日本でも社会的、政治的な問題に対して、声をあげる人が増えたことは大きな変化ですね。
そうですね。日本人の中にもそのような活動が活発化してきましたね。自由や価値観を大事にしている人が、増えてきていると思います。私もそういった教育を受けてきたので、社会の体制側につくよりも、人権などの普遍的な価値観を守るために戦うというスタンスです。例えばLGBT(※)は本当に大きな人権の戦いでした。それは社会貢献というよりは、人権を求めた戦いです。このような人権活動は、ヨーロッパは日本よりも圧倒的に強いですね。そこはヨーロッパとの1番大きな違いだと思います。
※(LGBTとは、レズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、バイセクシュアル(Bi sexual )、トランスジェンダー(Transgender )の頭文字をとったセクシュアル・マイノリティを総称する言葉のひとつ)
また、違いという意味で、もうひとつ個人的な発見でしたが、私が日本でびっくりしたのは、ホームレスの方たちが何も求めてこないということです。他の国では、ホームレスの方たちは、お金を恵んでくださいという要求がありますね。これも1つの大きな違いだと思います。多分、宗教というよりは文化の違いだと思うのですが。
困っている人を、相手の尊厳を守りながら助けるためには、どうすればいいか
- 日本くらいですよね。ホームレスの方が施しを求めないのは。多分私たち日本人は、ホームレスの方にお金を渡すと、逆に相手のプライドを傷付けてしまうんじゃないかという配慮があると思うんです。「武士は食わねど高楊枝」という諺もありますから。
でもリスペクトだけだとお腹は空きます。やはりリスペクトだけでは足りません。東日本大震災の後に『Share with FIAT』活動の一環として開催したシンポジウムで、参加者の中から多く出た質問は、「困っている人を、相手の尊厳を守りながら助けるためには、具体的にどうすればいいですか?」というものでした。やはり、施しの文化があまり一般的ではない日本では、失礼にあたるのではないか、というのをみなさん気にされていました。
- じゃあ遠慮して何も行動しないくらいなら、まずは寄付から始めてみるのもいいかもしれませんね。
みんなそれぞれ入り口は違いますので、寄付という方法でもよいですし、実際にHelpするという方法でもよいと思います。『Share with FIAT』活動の中では、年に3回、福島のオーガニックコットンを育てているNPOさんを訪問します。東京から40人ほどが行き、畑でコットンのケアをしたり、そこのコミュニティーのみなさんと話をする。これはとても大事です。彼らに対して、私たちはこれからもずっと一緒に考えていくよ、という気持ちを表すためですね。
- 『Share with FIAT』を始めてから、震災が起こったり、いろんなことがあったと思うのですが、実際に周りを見て何かが変わったなって思うことはありますか?
社会的に大きな変化を見れたら良いな、とは思うのですが、小さなことからどんどん集まって、大きな変化になれると信じています。少なくとも私たちの会社の中では、変化がありました。最初CSVは社内でもなかなか理解されなかったんですけど、震災を経験したからか、今ではとても素直に受け止めてくれていますし、その活動へのプライドも持ってもらっているようです。
LGBTに関しては社内でも大きな変化があったかもしれません。実は、FIAT以外のブランドでも社会貢献活動に力を入れており、アルファ ロメオでは自分らしく生きていける社会の実現を目指し、LGBTの活動を支援しています。この活動を通して、社内でのLGBTに対する意識は劇的に変わったかもしれませんね。
そういった意味でも、まずは問題の認知が重要だと思っています。やはり人は実態を知らないことに関しては、受け入れにくいですが、一度深く問題を知ることで寛容になることができますからね。日本人は、そういう異文化や異なる価値観をうまく取り入れることに、非常に長けていると思います。