# 030
TIZIANA ALAMPRESE
March 02, 2016

GENRES
文化福祉
この想い。つながる、ひろがる。
FIATやアルファ ロメオで有名な、自動車会社FCAジャパンでマーケティング本部長をされているティツィアナさん。CSV(Creating Shared Value:社会共有できる価値の創出)という概念を打ち出して、企業としてどう取り組んでいるのかお話を伺ってきました。
Reported by Editor Remi
— 今日はお忙しい中、お時間をいただき、ありがとうございます。それでは、早速ですがティツィアナさんの携わっている活動について、お聞きしたいと思います。
私はイタリアに本社がある、FCA(Fiat Chrysler Automobiles)というAlfa Romeo、CHRYSLER、FIAT、Jeep®、ABARTHなどのブランドを有する自動車グループの日本法人FCAジャパン株式会社で、マーケティング本部長をしています。
マーケティングという観点からも、そして個人の信条からもCSV(Creating Shared Value:社会共有できる価値の創出)の活動に取り組んでいます。私たちは「love」や「heart」という概念を重要視しているので、それを「share」していくことはとても大切だと思っています。
具体的な活動例を挙げて説明したいと思います。『Share with FIAT』という活動は、お客様と共に大きな幸せを分かちあうため、環境、教育、医療、貧困、障がい者支援などを扱う7つのNPOとFIATブランドがコラボレーションしながら、販売収益の一部を寄付するという形でのサポートのみならず、クラウドファンディングを活用して、FIATユーザーやファンからの支援者拡大も図っています。また各団体とのイベントを開催することで、彼らの活動の認知向上や理解促進に取り組んでいます。
活動を始めた当初は、社内でも理解を浸透させるのが難しかった
- この『Share with FIAT』というのは、ティツィアナさんがスタートの時から関わっているということですか?
そうですね。実はこのコンセプトは、私が生み出したものなんです。会社を巻き込んだプロジェクトを作れば、可能性が広がるはずだと思ってやり始めたのです。ちょうどFIATのブランディングにもぴったりだった、ということもあります。
結果的にこれらの取り組みは、私自身もレベルアップでき、会社にとっても様々なレベルで成長するメリットがあることがわかりました。活動を始めた当初は、社内でも理解を浸透させるのが難しかったのですが、東日本大震災を経験したことによって、今ではみんな深く理解してくれています。
- 確かに、日本に社会貢献や寄付の文化が根付いたのは、震災以降でしょうね。ところで、この「share」という単語は、日本語では、「分かち合う」「分ける」とかになりますが、「help」などいろんな単語がある中で、なぜ「share」という言葉を選んだのですか?
私の故郷イタリアの文化では、「share」という気持ちやふるまいはごく日常的なもので、もともと私の日常生活の中で起きていることなのです。良いことはもちろん周りの人と「share」するけど、悪い経験も「share」して同じ失敗をしないようにします。職場ではチームのメンバーと情報の「share」もします。「share」しないとコミュニケーションができませんよね。
『Share with FIAT』のサブタイトルは『この想い。つながる、ひろがる。』です。「share」をすることで、心と心がつながるということですね。
- ヨーロッパと日本のボランティアに対する意識の差って、どれくらいあると思いますか?
東日本大震災前の日本は、ボランティア意識が低かったと思いますが、今はどんどん意識が高くなっているのではないでしょうか。弊社でも何度か実施した「クラウドファンディング」というシステムは、様々なプロジェクトを短期間で催行できるので、とても魅力的な取り組みですね。日本でも欧米と同様に流行しているようです。今が自分たちの精神的な成長のためのひとつのステップ、という風に考える人が、日本人の中にも増えてきているのだと思います。
ヨーロッパ、特にイタリアはカトリックの国です。カトリックの世界では何か悲劇的な事が起きた時に、宣教師が派遣されるという伝統がありました。このような伝統によって培われてきたスキルのようなものは、ヨーロッパの国は今でもとても強固に持っていますね。
災害等の緊急事態において、すぐにボランティアを派遣できるのは、昔からのそういった経験が大きいと思います。また、ボランティアとは少し違いますが、市民意識から生まれる活動も活発ですね。社会的な不均衡とか、女性や子どもへの虐待や暴力があったときはすぐに結集して抗議しています。
イタリアが一番自由主義的な70年代に、私はフェミニストだったので、今では当たり前である女性の人権のことを、当時から主張し続けてきました。今はヨーロッパをはじめ世界中のあちこちでその価値観は広がっていますね。