Btn close sp
CONCEPT
これからのかっこいいライフスタイルには「社会のための何か」が入っている。社会のために何かするってそんなに特別なことじゃない。働いてても、学生でも、主婦でも日常の中でちょっとした貢献ってできるはず。これからはそんな生き方がかっこいい。r-libではそんなライフスタイルの参考になるようなロールモデルをレポーターたちが紹介していきます。
# 027
Dardenne brothers
June 03, 2015

r-lib | 東 紗友美 × ダルデンヌ 兄弟 連帯とは何か 映画『サンドラの週末』

GENRESArrow文化

連帯とは何か 映画『サンドラの週末』

 月曜日の投票のために、週末にサンドラは同僚たちを訪ねにいきます。ボーナスよりも自分が復帰するために1票入れて欲しいと言いますが、反応はそれぞれです。みじめな思いをしたり、励まされたりしながらサンドラの週末は過ぎていきます。果たして結果はどうなるのでしょうか。是非劇場でご鑑賞ください。

Reported by Sayumi Higashi




プロデューサーのドニさんは『息子のまなざし』以降ダルデンヌ兄弟と共同制作しています

民主主義はまだまだ長続きすると思いますけれど、民主主義にはやるべきたくさんの事が残されていると思います



— 日本でも最近トマ・ピケティの「21世紀の資本」が人気で貧困問題への関心が高まっています。格差社会などいろいろな労働問題があると思いますが、富の分配ということを監督はどうお考えですか?

ジャン=ピエール・ダルデンヌ:簡単に言えば、最も平等な国というのは累進課税を適用している国、持っている富の量に応じて課税額が決まっている国だということです。それは誰もが賛成する事です。確かに以前よりも財を持っている人達が様々な戦術を使って税金を逃れたり、税を少なく払うような仕組みができていると思います。これは問題です。社会が平等であるとはもう言えなくなってきています。かつてであればこうして持てる者に課税をして、そこから得た富を教育や病院、そして厚生年金などに再配分をすることによって社会の平等なシステムはうまく機能していたのに、そのシステムが今では機能しなくなっていることがあります。
 ですから、法律を変えていくべきだと思います。完全に法律を変えなければ脱税をしようとしてる人達が突然税金を払い始める訳がありません。まず、脱税ができないように法律を変えていかなければならない。その為には労働組合には多くなすべき事があるでしょう。また同時に一般の世論からの圧力もとても大切になってきます。一般から世論で圧力をかけて法律を変えるよう動くべきだと考えています。民主主義はまだまだ長続きすると思いますけれど、民主主義にはやるべきたくさんの事が残されていると思います。ただし、戦いを続けると言っても政府や機関に反対するだけの戦いが存在するのではありません。政府の機関が内部から変革をする可能性も存在しています。内部にいる人々を支持し、内部から政府機関そのものを変えていくように働きかけていくことも一つの戦いの仕方でしょう。



この映画は脆弱さに対する礼賛であると考えています


— 最後にあらためて、『サンドラの週末』のみどころについて教えてください。

リュック・ダルデンヌ:この作品を見る時、サンドラという女性の立場に立って、また同僚の立場になって、対話を心の中で続けて頂きたいと思います。果たしてその立場に立てるか立てないか、それを問い続ける旅を観客の人達にもして頂きたいです。そしてそれが全体の物語に繋がるかどうかで考えて頂きたいと思っています。

ジャン=ピエール・ダルデンヌ:重要なのは、脆い女性が、その弱さにも関わらず、他の人たちに会いに行ってお願いすることです。映画のはじめにサンドラは「自分が物乞いをしにいくようでそんなことはしたくない」と言います。「あなたの気持ちは分かるけれども、ボーナスの1,000ユーロを諦めてほしい。私の復帰に投票してほしい」と。そして相手も「こっちの立場になって」と言います。そのとき、彼女は同僚の立場になることができます。映画の最後で、サンドラも誰かの立場になります。同じような状況で弱い側が逆転すると、今度はその人の身になるのです。
 サンドラは、周りのひとから弱くて使えないと思われています。しかし、その彼女が、実は他の人を変える力を持っているし、そして自分自身をも変える力を持っていたのです。私たちはひとつのテーマのためではなく人物を中心に描いています。今の時代は力の強さを讃える世の中ですが、この映画はそれとは違う脆弱さに対する礼賛であると考えています。


— 今日はありがとうございました!!世界的な巨匠とご一緒できて光栄でした!!






『サンドラの週末』

5/23(土)よりBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー




※本記事の劇中の写真は全て
©Les Films du Fleuve -Archipel 35 -Bim Distribuzione -Eyeworks -RTBF(Télévisions, belge) -France 2 Cinéma


12
このエントリーをはてなブックマークに追加
Gplus original
Tw original
Fb original
Pocket original
ダルデンヌ 兄弟

ダルデンヌ 兄弟Dardenne brothers

PROFILE

-

1951年4月21日に兄のジャン=ピエールが、1954年3月10日に弟のリュックがリエージュ近郊の工業地帯で生まれた。ジャン=ピエールは舞台演出家を志してブリュッセルへ移り、兄弟は同地で出会ったアルマン・ガッティに影響を受けた。その後、原発で働いた資金で機材を購入。1974年以降、都市計画などの社会問題を映したドキュメンタリーを製作した。1978年、初監督作品となったドキュメンタリー『Le Chant du Rossignol』を発表。その後も様々なテーマでドキュメンタリーを製作した。 
1987年、ルネ・カリスキーの戯曲を基にした初の長編劇映画『Falsch (ファルシュ)』を発表。2作目の『'Je pense à vous (あなたを思う)』(1992年)は製作サイドの圧力により満足した完成は果たせなかった。1996年、束縛されない環境で製作した3作目の『イゴールの約束』を発表。第49回カンヌ国際映画祭の監督週間部門に出品されるなど、世界的な注目を集めた。
1999年、『ロゼッタ』で第52回カンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞。主演の新人エミリー・ドゥケンヌにも同映画祭女優賞をもたらした。
2002年の『息子のまなざし』では常連俳優のオリヴィエ・グルメを初めて主演で起用し、第55回カンヌ国際映画祭男優賞をもたらした。
2005年には『ある子供』で2度目となるカンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞。同賞を2度受賞した5組目の監督となった。
さらに2008年の『ロルナの祈り』は第61回カンヌ国際映画祭で脚本賞、2011年の『少年と自転車』は第64回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞、映画祭史上初の5作品連続の主要部門受賞を達成した。
2014年、マリオン・コティヤールを起用した『サンドラの週末』が第67回カンヌ国際映画祭に出品された。主演のマリオン・コティヤールの演技は絶賛され、全米映画批評家協会賞主演女優賞やニューヨーク映画批評家協会賞主演女優賞などアメリカの批評家協会賞などの映画賞を多数受賞し、第87回アカデミー賞では主演女優賞にノミネートされた。

by 東 紗友美
取材のご依頼はこちら