# 023
YU NAKAMURA
March 10, 2015

GENRES
文化
「関係性のレシピ」で笑顔をシェアし、しわを生み出す
世界中の台所を巡って料理を習ったり、おばあちゃんのレシピ継承などをしている40creations代表の中村優さんに、台所から生まれるコミュニケーションとしわの在り方について伺ってきました。今回は中村さんが普段使っている「料理をしながら話を聞く」というスタイルで取材してみました。
Reported by Miki Horie
— よろしくお願いします!!今日はお料理をしながらインタビューするという企画なので、お料理の方も教わりながらやっていきたいと思います!!さて、先生、今日はいったい何を作るんですか?
今日はスペインの家庭料理のアロスコンポヨっていうチキンライスみたいなもの、南仏の家庭料理のラタトゥイユ、ちょうど今が旬の(取材時は夏でした)空豆とブロッコリーを使ったポタージュとサラダです。では、早速つくっていきましょう!!
— それにしてもキッチン周りが全部おしゃれで、楽しい空間になっていますね!!
それ重要なんですよね!!台所を取り巻く全てを楽しみたいと思っているので、色んな台所を見て、学んでいるんです。
— なぜ料理をされるようになったんですか?
台所から生まれるコミュニケーションや笑顔が好きで、笑顔をシェアする手段として料理をはじめたんですよ。あとは料理だけではなく、編集もやっています。料理と編集の2人の師匠がいて、なんでもやるからタダで教えてくださいって言って弟子入りした期間があって、そこからこの道に入りました。
— 最近立ち上げられたという40 creationsというのは、どんな組織なんですか?
40というのは、「40(シワ)」なんです(笑)。世の中にしわを生み出すようなことを40個仕掛けていくような組織。サイトは準備中なんですけどね。みんながパッと笑顔になってしまうような、良いしわが生まれるようなプロジェクトを40個仕掛けていくんです。そして、40個仕掛け終わったら消滅するような組織。
ー レシピはいつもどうやって考えているんですか?
おばあちゃんのレシピを世界中で集めていて、そのレシピを基に作ったり、家庭料理がすごく好きなので、家庭に潜り込んだりしてますね。
— そのアポイントメントはどうやって取るんですか?
基本的には人の紹介が多いです。やっぱり料理上手な人やグルメな人って、誰が料理が上手か知ってるんですよ。「あの人の所に行ってこれ習ったらいいよ」とか。だから人伝いが1番多いです。紹介してもらった人の紹介で次の人に会いに行くという感じですね。旅行中もほとんど家に泊めさせてもらってますね。「料理するからタダで泊めてくれ」って言って(笑)。
どんな時に笑顔を作れるかなって思った時に料理を作ろうと思った
— シェフの見習いみたいですね!!飛び入りで行っても教えてもらえるんですね。なぜ人の家に上がって料理しようと思ったんですか?
以前、社会起業家をインタビューしてまわっていた時期があったんですけど、それを通じて私にとって重要なのは笑顔だ、笑顔があればなんでもいいんじゃん? って思ったんです。そして、じゃあ、私はどんな時に笑顔を作れるかなって思った時に「料理だ!」って。こうやって一緒に作ると、作業してるから心に少し隙が出来るんですよ。だから単純なインタビューより多くのプライベートなことも聞けるんです。信頼関係が生まれたり、早く仲良くなれたりするのは一緒に作ることの魅力だと思います。
— 一緒に作ると確かに心の壁もなくなりますね!!何事も始まりですね。でも最初のきっかけが1番難しいと思うんですけど、どうやって始めたんですか?
2週間ずついろんな場所に行って、どのくらいの期間があれば素敵な人や美味しいものにたどり着けるかっていう実験をしたんです。その時には私の旅のお裾分けをする「YOU BOX」っていうものを始めていました。旅先で出会った調味料などの詰め合わせと、それにまつわるストーリーを冊子にして会員に発送するというもの。例えば、バニュルスっていう南仏の街の、自然派ワインだけで作られているビネガーの時は、超ロックな女性が作っていたんです。その彼女は、凄く美味しいビネガーを作るコツを聞くと、「バクテリアと仲良くなることよ」って答えてくれて(笑)。そういった生産者などのストーリーを紹介したりするんです。
南仏のバニュルスという地で、ナタリーさんは自然派ワインだけでワインビネガーを作っている。
ぶどうがなる山々に囲まれた場所に、ポツンと佇むナタリーのアトリエ。壁すら無い風通しの良い場所に、布のかけられた樽がずらり。
小さなアトリエなのに、最近ではパリの星付きシェフも愛用するほどの実力派。「私が作っているというより、バクテリアの働きを、隣でサポートする感じね」。とナタリーは茶目っ気たっぷりに笑う。
ナタリー(右)と、パリから移住し、そこで働いているキャロライン(左)。
バニュルスで作られる自然派ワインに魅せられて、たった一人で、一樽からワインビネガーを作り始めた。「誰も教えてくれないから、独学。自分で実験しているうちに、だんだんバクテリアと仲良くなって来たのよ」
ボトルは、ガラス作家によるオリジナル。「ワインも手作りなんだから、ボトルも手作りにしたいじゃん?」
雑草だらけの無農薬の土地で、雑草をかき分けかき分け収穫するマニュエル。ブドウを探す作業。土に近い場所になっているブドウほど、濃い大地の味がするのだとか。
はち切れんばかりにたわわに実るブドウ。南仏の、太陽の光をたっぷり浴びた、力強い味がする。