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福祉
医療福祉とエンターテインメントの融合で生み出す未来
音楽×アート×医療福祉を通じてあらゆる人々の積極的社会参加を推進するNPO法人 Ubdobeの代表理事である岡勇樹さん。現場が考える、本質的な福祉の良さを世界に発信したいといいます。今回のレポーターの村上知美さんは介護福祉士なのでインタビューは大いに盛り上がりました。
Reported by Tomomi Murakami
ー 今日はよろしくお願いします。私は特別養護老人ホームで介護福祉士をやっているので、今日のお話はとっても楽しみにしていました。それではまず、現在の活動内容を教えていただけますか?
いろいろやっているのですが、1つ目が医療福祉エンターテインメントを行うNPO法人「 Ubdobe(ウブドベ)」。2つ目は訪問介護と障がい児の移動支援、ガイドヘルパーの事業所をする「 Beans 」。この「 Beans 」は国内の事業展開もしつつ、ニューヨークなど海外にも事業所を作っていきます。あとは音楽レーベル「 ONE ON ONE LABEL 」ですね。レーベルの方は純粋に音楽だけの活動です。
- ホントにいろんな活動をされてるんですね!!では医療福祉エンターテインメントの「 Ubdobe(ウブドベ)」について教えてください。
音楽・アート・医療福祉を融合させたプロジェクトを通じて、あらゆる人々の積極的社会参加を推進しています。2010年からNPOにして現在4年目です。
ミッションが3つあり、1つ目はユニバーサルな世界を創るということです。未だに障がい児や高齢者に対する偏見や差別っていっぱいあるじゃないですか。周りの環境が整ってないが故に、ずっと閉じ篭もらざるを得ない人々が、積極的に自分のライフスタイルを確立できるようにしたいというのが目標です。
2つ目はそういう人をサポートする僕らヘルパーとか社会福祉士、看護師などのサポーター達をもっと増やすことです。特に高齢者介護は2025年問題もあり、100万人従事者が足りなくなるので、その人材不足も解決しようというのが目標です。
3つ目はそれらを解決する為に社会的イメージそのものを変えていこうという目標です。
これを達成するために6個のプロジェクトを目的別に分けて、推進しています。
ー そのプロジェクトって例えばどんなものがあるんですか?
SOCiAL FUNK! (ソーシャルファンク)というプロジェクトは、簡単に言うと医療福祉がテーマのクラブイベントです。クラブなので、アーティスト目当てで来る人もいれば、クラブ好きだから来るって人もいますよね。そういう介護・医療に興味のない人々に向けて、ゲストに厚生労働省の方や障がい当事者、難病患者などを呼んで、DJとライブの合間に病気や福祉について話してもらいます。普段の遊び場にそういう情報を持ち込んで、遊んでるだけなのに帰る頃にはちょっと病気や福祉について詳しくなっている、というふうにしたいなと。せめて簡単なキーワードを覚えて帰るとか。そういうちょっとしたキッカケになればいいなぁと思ってやっています。
SOCiAL FUNK!
- 代々木公園などでもイベントやってるんですね!!
アーティストと子ども達がコラボしてそれを大人達が観に来て、最終的に福祉に繋がる、という感じのイベントです。誰でも来れる場所で、馴染みの無い業界への入り口作りとして多くの人に知ってもらうキッカケになればと思っています。Shing02さん、曽我部恵一BANDさんなどhip-hopやロックの方々から、DJだとKENSEIさんやAmetsubさんなど、ジャンル問わずクラブやフェスシーンでバリバリやってる人達に参加してもらっています。障がいや難病、言葉がしゃべれない子っているじゃないですか。そういう子を変な目で見始めちゃうとそれが一生続いてしまうと思って、偏見を持つことなく子どもが育つよう、小さな頃からみんなで一緒に一つのイベントを作ろうというテーマで「 Kodomo Music & Art Festival (コドモ ミュージック & アート フェスティバル)」というイベントを主催しています。子ども達がお客さんとして来るのではなく、子ども達がアーティストとして出演する側になるというものです。
Kodomo Music & Art Festival
市民がナチュラルにユニバーサルな環境を生み出してしまえばいい
- 介護や福祉を堅苦しく学ぶのではなく、普段の生活と変わらない中で自然と学んでいくという感じですね。
介護とか福祉ってたまたま名前がついただけで、そもそも困ってる人がいてそれを手伝える人がいるならやればいいじゃん、っていう当たり前の話だと思います。たまたまこの国には介護保険が生まれ、制度で守られてるけど、アメリカとか他の国に行くとそんなもの無いんです。日本とドイツと韓国ぐらいしか介護保険ってないんですよ。それ以外の国は30年前の日本みたいな感じで、家族が看たり、お互いが助け合うしかないんです。北欧の福祉国家と言われる国々は税制で守られていますが。制度とかを飛び越えて、市民がナチュラルにユニバーサルな環境を生み出してしまえばいいんです。
- 素晴らしい考えですね!!そこまで情熱的な岡さんが、そもそも介護や福祉に携わろうと思ったキッカケって何ですか?
キッカケは、僕が20歳ぐらいの時に母をガンで亡くしちゃったからなんです。それまで毎日クラブで遊んだりフラフラしてたんです。でもある日いきなり母がガンになり、半年後に死んじゃったんですよ。僕にとっては「いきなり」でしたが、母は何年も前から闘病していたことが亡くなった後に分かりました。医療情報や福祉の情報って、大切だし、知っておかなきゃいけない事だけど、身近にないと知らないままじゃないですか。ということは、このままだとみんな大事なことを知らないまま死ぬんじゃないかって思ったんですね。自分の身近な家族をそのまま亡くしちゃって、何もしてあげられなかったっていう後悔みたいなものがずっとありました。
母が死んで5年ぐらい経った後に、今度は爺ちゃんが認知症になったんですよ。娘を亡くしたショックでその当時から段々おかしくなって。最終的に結構重度の認知症になったんです。レビー小体型認知症っていう。母のガンの時もそうですが、結構病院を信頼してたというか、どこか医療機関に入れば出てくる頃には治ってるっていう感覚だったんですね。でもそんな事はなくて、ガンで実際死ぬし、爺ちゃんもこのままひどくなって、最終的には死んじゃうんだろうなって思った時にたまたま音楽を聞かせたんです。僕は元々アメリカに住んでたんですけど、爺ちゃんが何回か遊びに来てくれてたんですね。その頃一緒によく聞いてた曲を試しに聞かせてみたら「おお!!勇樹じゃんか!」ってなったんです。もうホントにビックリしました!!重度の認知症なのに妄想から戻って来たんですよ!!
Art Workshop
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