Btn close sp
CONCEPT
これからのかっこいいライフスタイルには「社会のための何か」が入っている。社会のために何かするってそんなに特別なことじゃない。働いてても、学生でも、主婦でも日常の中でちょっとした貢献ってできるはず。これからはそんな生き方がかっこいい。r-libではそんなライフスタイルの参考になるようなロールモデルをレポーターたちが紹介していきます。
# 012
AYAKA YAMASHITA
November 04, 2014

r-lib | 梅野 舞 × 山下 彩香 マイノリティが持つ力を芸術作品としてポジティブに発信

GENRESArrowファッション

マイノリティが持つ力を芸術作品としてポジティブに発信

先住民族の持っている可能性を表現したいと語る山下さん。自身の経験からくるマイノリティに対する熱い思いが伝わってくる。地域住民とも溶け込んでいる。

Reported by Mai Umeno



今の自分でいいよっていうメッセージを伝えたい

ー 普通じゃない人にシンパシーを感じるんですか?

 えぇ。それはなぜかと言うと、実は私は生まれつき左耳が聞こえないんです。このことは『EDAYA』 を始めてから人に話すようになったんですが、それもあって普通の人以上にそういう人達に対してどうにかしてあげたいっていう気持ちが強いんです。してあげたいっていうより、一緒に何かやりたいという思いがすごく強くて、言葉がいいか悪いかは別として、「マイノリティ」という言葉が作品作りのキーワードの一つなんです。もう一つが、芸術を通じた「ポジティブな発信」ですね。


ー 芸術を通じてポジティブな発信ですか。もう少し詳しくお聞きしたいです。

 学生時代に少し劇団に関わっていたのですが、色んなメッセージを芸術作品として発信するのが好きだったので、そういう発信ができないかなって思ったんです。彼らが持つ力を芸術作品として世界と繋げていきたい。今回の作品で私たちのモチベーションとしては、現地の山岳先住民族が作っている作品を、ポジティブな方向でみんなに見てもらいたかったんです。貧しくかわいそうな暮らしをする人々という一方的な見方だけでない、彼らの強さ、生き様みたいなものを綺麗な作品を通して伝えたかったんです。「マイノリティ」と言っても、例えばいじめられた経験や仲間はずれにされた経験とかって結構誰にでもあるじゃないですか?そういう人達や、今の社会で生きにくいなって感じていたり、自分の居場所ってどこだろうと思っている人達に、そういった壁を突き破るような強さを伝えたいなって思っているんです。竹の根っこは、「自分に根付く」というメッセージもあって、そういう自己肯定みたいな、今の自分でいいよっていうメッセージを伝えたいですね。


<試着動画>

★レポーター梅野舞が実際に着けてみます★









ー とても素敵な作品ですね!!デザインは山下さんご自身で考えられているんですか?それとも元々、伝統工芸としてこのようなデザインがあったんでしょうか?

 伝統工芸には無い、全く新しいデザインです。インスピレーションや工芸技術という所で伝統を生かしています。今回は、私がコンセプトを現地の職人に伝えて、竹の根っこでやってみたいという話をしました。根から実際のデザインを生み出したのは職人さんです。職人さんに根っこで色んな形を30種類ぐらい作ってもらって、その後みんなでどれがいいか話し合い、試行錯誤して完成しました。


ー ブランドをやりたいと思ってから今に至るまでって簡単じゃなかったと思うんですけど、辛かったり大変な事はありましたか?現地の人との意思の疎通とか大変だと思うのですが。

 最初は大変でしたね。もう話の土台から意思の疎通ができませんでした(笑)。まずサイズ寸法の感覚の違い。日本だったら小学校でcm(センチメートル)を習うじゃないですか。そういう感覚がなくて、紐で長さを測ってる人達なんです。だからサイズを同じにしましょうって言っても全然伝わらなかったし。あとは例え話をする時に、シャネルみたいなパッケージにしたいよねって言っても、シャネルって何ですか?グッチってなんですか?みたいな(笑)。






出来る限り現地の人達の意見も取り入れながら共同制作でやりたかった

ー 確かにイメージを伝えられないって大変ですね。シャネルとかは画像を見せればわかってくれるかもしれないけど、そうやって見せれない時は難しいかもしれませんね。
 
(ポスターの写真/上)これも本当に大変だったんです!!カリンガ族の女の子をモデルに使ったんですけど、表現の指示が難しかったですね。「力強く自分らしく」っていうコンセプトを伝えたかったんですけど、現地ではそういう力強くて自分らしいっていう表現は、めっちゃ笑顔!!みたいなイメージなんです(笑)。フィリピンはもともと300年ぐらいスペインの植民地だったこともあって、性格としてラテンのノリで明るいっていうのがあるからかもしれませんね。満面の笑顔で「私を見て!!」みたいな感じが、現地の人にとっての力強いイメージ。こちら側が伝えたかったイメージとしては、 凛とした芯がある強さが欲しかったんですが、それが満面の笑みだとあんまり伝わらない(笑)。『EDAYA』を将来的にはフィリピンを代表するブランドにしたいと現地の人には言っていたので、なんでこんな暗い表現がフィリピンの代表なんだって言われて、全く理解してもらえなくて。海外や日本の雑誌を見せて私なりの力強さの解釈を教えたりとか、結構難しかったです。



ー それは大変ですね(笑)。そういういろんなハードルがある中で、日本ではなくフィリピンで会社を立ち上げることにした理由は何でしょうか?

 もともとフィリピンの会社で立ち上げる際の想いとしては、できるだけ現地の人達が自分達で発信出来るようにしたいと思っていたからです。よくありがちなのが、デザインやプランニングなどの頭を使うパートを日本でやって、現地では作らせるだけ、みたいな環境ですよね。そうじゃなくて、出来る限り現地の人達の意見も取り入れながら共同制作でやりたかったんです。フィリピンから世界へ繋がっていくようなブランド作りをお手伝いして、最終的には現地の人だけでほとんどまわせればいいなって思っています。ただ、やはり売る為には日本のファッションの世界をよく知る人が必要だし、フィリピンだけで全部は出来ないのもわかるので、そのあたりのバランスのとり方が将来の課題です。


竹の楽器で演奏するワークショップ








123
このエントリーをはてなブックマークに追加
Gplus original
Tw original
Fb original
Pocket original
山下 彩香

山下 彩香AYAKA YAMASHITA

PROFILE

-

【山下彩香プロフィール】


EDAYAディレクタ―&デザイナー。


1985年生まれ。大の旅好きでこれまで40ヶ国ほどを旅する。高校在学中には、ロータリー財団の青少年交換派遣学生として1年間カナダに在住。その後、東京大学農学部在学時はタイをフィールドに土壌水分量の研究をする。大学院は、環境から一歩踏み込み、環境と人の関わりについて学びたいと、東京大学大学院医学系研究科人類生態学教室へ進学。フィリピン北部の鉱山にて、金を手堀する人々の労働環境について研究した。同時に、それまで隠してきた左耳が聞こえない事、表現活動への潜在的欲求をベースにした「マイノリティと芸術」というテーマでの個人研究も進め、在学中の2011年に鉱山での仕事にも従事していた、竹工芸家・音楽家のバナサン氏とEDAYAの原型となる活動を開始。2012年3月に大学院を卒業し、同年フィリピンにてEDAYA ARTS CORDILLERA CORPORATIONを起業。現在はEDAYAの総合ディレクションを行っている。

by 梅野 舞
取材のご依頼はこちら