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r-lib | 編集長S - 編集長コラム 中東紀行その1

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編集長コラム 中東紀行その1

Written by Editor in chief

こんにちは。編集長のSです。

先日、7年ぶりに中東に行ってきました。取材を兼ねて行ったので、いま記事を書いているのですが、なかなか書き進められません。

何がそうさせているのだろうと考えているうちに、実はそのこと自体をちゃんとコラムに書くべきなんじゃないかと思ったので、極めて個人的な内容ですが書いてみたいと思います。


7年前に僕が初めてパレスチナ難民キャンプを訪れた時は、衝撃の連続でした。映画やドキュメンタリー番組で観てきたようなドラマが本当にそこにあったからです。パレスチナ難民キャンプは各所に点在するので、いろんなところに行ったのですが、ドキュメンタリー映画の主人公になったおじさんに会いに行ったり、難民キャンプに泊まったりもしました。

そこで触れる悲惨なエピソードは、一見すると被害者の誇張かもしれないと思ったりもしたのですが、実際に元イスラエル兵だった友人にヒアリングしたり、書物を読む限り、占領の実態は真実であると確証を持ったものです。(語弊があるのを承知で簡単に説明すると、イスラエル国内にパレスチナ自治区というエリアがあって、事実上イスラエルに占領されています)

イスラエルは徴兵制なので、18歳から男女ともに兵役につきます。男性は3年、女性は2年もです。免除される条件も多岐にわたるので、強制的に全員徴兵!というほどではないですが、大多数の国民が兵役を経験すると思って大丈夫だと思います。

精神的に成熟する前の、青春時代に徴兵というのは、人格形成に大きな影響を及ぼすだろうし、そういった意味ではイスラエルの若者も難しい立場にいるなということ、また、過去にホロコーストを経験している民族であるということが、免罪符にはならないけれど、それでもやはり考慮せざるを得ない面もあるとは思います。


(2010年撮影:S)


そうなると、加害者側とされるイスラエルは実際のところどうなってるんだろう?というのが気になって(いわゆるユダヤ人が住む)イスラエル最大の都市テルアビブにも行きました。10年以上前にはポーランドにあるアウシュヴィッツにも行きましたし、ユダヤ人の置かれている状況を知らないわけではありません。

世間一般では「圧倒的軍事力を持ったイスラエル VS テロ行為でしか抵抗できない隷属状態にあるパレスチナ」という構図があります。それは事実といえば事実なんですが、それでもそういう先入観なしに「そこで起きていること」を見てみたいと思って、できるだけ中立的な第三者の視点でいようといつも心がけています。

そうはいっても、目に入る光景、耳に入るエピソードがパレスチナに対して同情してしまうようなものが多く、親切にしてくれるパレスチナ人と仲良くなるごとに、「ここの子どもたちがイスラエル兵に殺されたら、イスラエルを憎んでしまうんじゃないか?」と、自分もこの憎悪の連鎖に絡め取られるんじゃないかと思ったものです。

基本的にそんなスタンスで7年前は行ってました。だから今回の旅は、初めての衝撃というバイアスがかからずに、冷静に見れることを期待して行きました。感情移入しそうになるのが懸念点なくらいでした。

ところが、想定外なことに、冷静になろうと頑張るどころか、旅を通して結局一度も、感情移入してしまいそうな自分に抗う機会は訪れませんでした。つまり、冷徹なまでの傍観者でいることしかできませんでした。ほとんど何にも強く心を動かされなかったのです。

これにはある意味ショックを受けました。

現地の人たちに寄り添うことができなかったのは、心を閉ざしていたからかもしれません。

問題意識の低下、感受性の鈍化、取材能力がないから事実を掬い上げられない、センセーショナルな事件を期待していた、刺激を感じるハードルがあがっている・・・等々なんとでも言えてしまうし、どれも当たっているようで、でもそう言われても納得できないというか、悶々としたまま自分に問いかける日々です。

悪く言うならば、全てが予定調和に思えて問題意識を持てなかったのかもしれません。それに輪をかけて、物事はグレーというか多面的なので、結論を出しにくいという事情もあります。

まとまりがない文章になってしまいましたが、そこらへんの不感症な自分と向き合いながら、今後数回にわたって正直に中東紀行を書いてみたいと思います。

次回お楽しみに。

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