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これからのかっこいいライフスタイルには「社会のための何か」が入っている。社会のために何かするってそんなに特別なことじゃない。働いてても、学生でも、主婦でも日常の中でちょっとした貢献ってできるはず。これからはそんな生き方がかっこいい。r-libではそんなライフスタイルの参考になるようなロールモデルをレポーターたちが紹介していきます。
# 009
DAISUKE IMAJO
October 08, 2014

r-lib | r-lib編集部 れみ × 今城 大輔 この近くで、遠くで、そして今起きていることーー

GENRESArrow国際協力文化

この近くで、遠くで、そして今起きていることーー

グローバルフェスタ2014で上映された映画を解説する今城さん。この日は難民映画祭の先行上映として『戦乱前夜に咲いた花〜地球でイチバン新しい国・南スーダン〜』が上映されました。この映画は18日にも難民映画祭で再度上映されます。

Reported by Editor Remi


映画祭に関わっているのだから日本でちゃんと公開させなきゃいけないという使命を感じる


ー 何か、国境なき医師団の時と難民映画祭で上映された作品で、リンクするエピソードとかってありますか?過去の上映作品も含めて。

 第4回の難民映画祭で上映された『ビルマVJ』という作品が自分の中で一番お気に入りなんです。国境なき医師団の時の経験などが全部リンクしているという意味で象徴的な作品だからです。今でこそ政権の姿勢が変わりましたけども、私がミャンマーに居た時は2001年なんですが、軍事独裁政権の絶頂期で、そのような時代の流れで日本人の長井 健司さんというジャーナリストが射殺されたり、多くのデモがあった時期なんです。軍事独裁政権というシステムの中で人々が置かれている状況がどういうものかというと、本当に自由がない状態なんですね。国の予算の大半が軍事費に当てられ、教育や保険医療は1%未満みたいなところでも、人々はやっぱり表現したいし、自分達が置かれている状況っていうのを外に伝えたいわけです。アウンサンスーチーさんが「あなた達の自由を私達の自由の為に使ってください」というような事を訴えていたと思うんですが、私も現地ですごくストレスを感じていたんです。発言が出来ない、事実を伝えられない。パリの本部とやり取りをする時も、ミャンマー政府に関するやり取りとか、現状の分析とかは一切書けないんですよ、お互い。職員とその時の情勢について話すんですけど職員の人達もやっぱり警戒して、自由に政治について語れない。その状況がいかに厳しいかというのを見てきたので、『ビルマVJ』を観た時は、本当に映画の力ってすごいなと思いました。

 これがあったから民主化されたとは思わないですけど、それでも世界の意識を高めた要因の一つだとは思っています。あの作品がアカデミー賞でノミネートされて知名度が上がったのもあるんですけど、映画の力、映像の力は、本当にすごくて武者震いをします。そうなるとやはり映画祭に関わっているのだから日本でちゃんと公開させなきゃいけないという使命を感じるわけです。だから最終的に公開することができたのはとても嬉しかったですね。裏方として映像業界とか人道支援業界に関わる人間としてやれる事というのは、やっぱり自分が医師団のメンバーでいた時の経験からずっと根が深いものとして自分の中ではあったんですね。



支援とか保護を必要としている人達の傍らで仕事をした経験が、今の自分を作っている


ー そんな今城さんが大切にしているもの、モットーのようなものありますか?

 自分の興味がある事しかやらないって事かもしれないですね。自分がやりたい事しか今までしてこなかったので、それはそれで大変なんですけど。自分が最初に働いた現場が国境なき医師団というNGOの場で、少なくとも支援とか保護を必要としている人達の傍らで仕事をした経験が、今の自分を作っていると思います。それは映画の仕事をしててもそうですし、その他のイベントに関わっていても同じように自分を作っていると思うのですが。


ー 難民映画祭に興味はあるけどまだ足を運んだことがない人に何かアピールをお願いします。

 たぶん難民の問題に関心がある人、あるいは人権侵害とか紛争の問題に関心がある人達は難民映画祭に関心を持っていただけていると思うんですけれど、それでもラインナップの中でいくつかちょっとユニークな作品という風に我々が考えているものがあるので、そういうところから入って頂きたいなというのはあります。『スケーティスタン』はスケーター達がアフガニスタンの子ども達の未来の為に立ち上がるという作品です。『FCルワンダ』はルワンダの虐殺から今年で20年なんですけど、虐殺の被害者と加害者だった親の子ども達が同じサッカーチームで選手としてプレーをしているという話です。『戦乱前夜に咲いた花〜地球でイチバン新しい国・南スーダン〜』はNHKさんの作品ですけれど南スーダンが独立してすぐの話です。今はまた内戦に入ってしまっていますが、その束の間の独立と平和が訪れた間にミス・マライカというミスコンを再開させるんです。そこに出場するファッションや美に興味がある女の子達が同時に国づくりを担う話なんですね。ファッションと美、華やかな舞台という切り口で、紛争や貧困といった日々直面している現実を合わせて考えるきっかけになる良い作品だと思います。

 だから難民問題とか紛争とかそんなにストレートな話でなくてもいいんです。紛争やってても難民であろうと、20代の女の子はファッションに興味があるんですよ。子ども達はスケボーじゃなくても何でもいいんですけど、外で楽しく遊びたいんですよ。20年前の紛争、虐殺を経て新しい未来を築く時に若者達はサッカーをしたいわけですよね。それはたぶん日本だろうがウガンダだろうがアフガニスタンだろうが南スーダンだろうが同じで。そういったところから、入りやすい作品だと思うので観に来てくれる人が増えたらいいなと思っています。



人間はどこにいても人間で、みんな楽しく生きたいし、自分に興味がある事をやりたいわけですよ


ー ただただ悲惨なだけというわけではなくて、人間のドラマがあると?

 そうですね。それはもう人間はどこにいても人間で、みんな楽しく生きたいし、自分に興味がある事をやりたいわけですよ。


ー じゃあ、あまり構えずに行ってみたほうがいいですよね。

 そうですね。逆に既にある程度知っている人達からすると、たぶん普段なかなか知る事の出来ないテーマもあると思うんです。例えば『シャングリラの難民〜幸福の国を追われて〜』という作品はブータンの話なんですけど、ブータンと言えば幸福、国民総幸福度世界一位をアピールして、国王も震災の後日本に来て応援してくれました。だけど、そんなすごくポジティブなイメージのブータンから実は13万人くらい人々が国籍を剥奪されていたんですね。20年前のことですが。ブータン政府も認めているんですけど、追い出されたそのブータン難民と言われている人達が今どうしてるかというと、多くがネパールに入ってそこからアメリカなど世界の様々な国に移動してるんです。みんなブータンって幸せな国なんでしょ?としか思わないところを、我々からすると、いやいやそんな一筋縄ではいかないんですよ、っていう映画なんです。だから、色々勉強してる人にとっても新しい発見とか知らない事が詰まっているし、映画・映像だから整理されてわかりやすく、かつ現実味を帯びて入ってくると思います。


ー それでは最後に今城さんにとって、難民映画祭のお仕事とは?

 私にとって映画の普及や人道援助は、自分にとって世界との関わり方だという風に思ってます。だから別に人生とは◯◯だ、という大袈裟な事ではないんですけど。世界との関わり方として人道援助の仕事もある。世界と、自分という個人の関わり方の問題ですね。私は物を作っている人間ではないし、紹介したりサポートする事をやってるいんですけど、それが私にとっての世界との関わり方ですね。


ー 難民映画祭への情熱がとても伝わってきました。11日から始まる難民映画祭に是非多くの方に来場してもらって、具体的なアクションに繋がっていくといいですね。今日はありがとうございました。


(了)



















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今城 大輔

今城 大輔DAISUKE IMAJO

PROFILE

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プロフィール/ 今城大輔
1973年東京生まれ。1999年から2007年まで緊急医療・人道援助を専門とする国際NGO国境なき医師団の事務局職員および現地アドミニストレーターとしてミャンマー、ネパール、スリランカなどのプロジェクトに従事。2007年より2年間、日本の映画配給会社勤務を経て2009年よりUNHCR難民映画祭を担当する傍ら、2010年にはハイチ、2013年にはソマリアにおけるNGOの医療援助活動にも参加。

■第9回UNHCR難民映画祭公式ウェブサイト
http://unhcr.refugeefilm.org/2014/index.php

■UNHCRの活動について詳しくは
http://www.unhcr.or.jp/html/index.html

by r-lib編集部 れみ
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