# 031
HIRONOBU KUBOTA
July 21, 2016

GENRES
国際協力
戦場ジャーナリストとして伝えたいのは、戦火の中にも一般市民がいるということ
アフガニスタン、イラク、シリアと、この15年間紛争地を取材してきた久保田さん。日本人に現地の本当の姿を知ってもらいたくて活動を続けてきました。しかしまだまだ日本の報道環境では、理想の実現には遠いようです。久保田さんはこの15年間の集大成として映画『THE TRUTH』を制作されました。
Reported by Yoshino Horiuchi
伝えなければならないことの1%も流れていない
ー 日本人の感覚が世界とズレているんですか?それとも日本の報道環境に問題点があるとお考えですか?
「卵が先か、鶏が先か」に近いのですが、実際、日本の報道は海外のAPやロイターの配信の垂れ流しがとても多いです。作り手に思い入れがないから、内容の薄いものになり、受け手も飽きるという悪循環が起きています。それでは視聴者の問題意識も育ちませんよね。
海外ではよく知られたことですが、日本では国際報道の量そのものがとても少ない。伝えなければならないことの1%も流れていない印象です。例えば、夜の報道番組の特集でVTRが8分間流れるとしたら、実際は800分くらいは現地で撮っているわけです。
ー 残りの99%を丸ごとカットするのは、確かにもったいないですね。
だからこそ、今回それを映画にしました。『THE TRUTH』はわたしがアフガニスタンに通い始めてからの15年間の集大成でもあり、これまで報道でカットされ続けていた「お金にならない映像」、戦場ジャーナリストとしてわたしが見てきた現地のありのままの姿を、2時間弱に詰め込みました。
自分の想いを消して、現場にあったことを、そのまま伝えること
ー 今回 r-lib が『THE TRUTH』の初上映会を主催させてもらえることになりましたが、実際にはどんな人に観てもらいたいですか?
矛盾しているかもしれませんが、「戦場」や「難民」といったことに興味を持っていない人、これまで興味を抱くきっかけがなかった人にこそ観てほしいです。歴史的背景がどうとか、人としてこうあるべきだとか、難しいことは一切語っていません。血だらけの悲惨なシーンもありません。むしろ予備知識ゼロで観て、それぞれが何かを感じてくれたら…と思います。
ー 最後に、久保田さんにとって、「報道」とは何なのでしょうか。
自分の想いを消して、現場にあったことを、そのまま伝えること。それに尽きると思います。「切った張った」だけではない、現実にそこにいる人々の生き様をもっと多くの人に知ってもらいたい。それも嘘や誇張はせずに、ありのままの姿を写すことで。今回の『THE TRUTH』も、ぜひ多くの人に観てもらいたいです。
ー 今日はお忙しい中ありがとうございました。まだまだ聞きたいお話がたくさんあるんですが、その他のエピソードは講演会や上映会に足を運んでもらって、直接聞いていただくというかたちで(笑)。
そうですね(笑)。お待ちしています。
《レポーターの感想》
《編集後記》
久保田さんの熱い語りに、予定時間は瞬く間に過ぎてしまいました。不思議なことに、「戦場」の話を通して浮かび上がるのは、「日本の報道」の問題でした。それはそのまま現在の日本人の問題でもあります。久保田さんは今回の映画を制作することで、「戦場のありのままの姿を伝える」だけでなく、我々日本人の意識に、小さくとも確実な一石を投じたのだと思いました。この一石による波紋が、いつかは大きな波となるのかもしれないし、ならないのかもしれない。まずはその久保田さんの渾身の一石を、自ら体験したいと思います。
最新作『 THE TRUTH 』初上映会 & 久保田弘信トークイベント
【日程】 7/31
【時間】 1部(上映) :16:00〜18:30
2部(トークイベント):19:00〜20:00
3部(懇親会) :20:00〜21:00
【場所】 東京都豊島区巣鴨1-9-1 Ryozan Park 巣鴨 B1
【料金】 2,000円(懇親会は別途費用 未定:500〜1,000円)
【主催】 r-lib