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CONCEPT
これからのかっこいいライフスタイルには「社会のための何か」が入っている。社会のために何かするってそんなに特別なことじゃない。働いてても、学生でも、主婦でも日常の中でちょっとした貢献ってできるはず。これからはそんな生き方がかっこいい。r-libではそんなライフスタイルの参考になるようなロールモデルをレポーターたちが紹介していきます。
# 031
HIRONOBU KUBOTA
July 21, 2016

r-lib | 堀内 美乃 × 久保田弘信 戦場ジャーナリストとして伝えたいのは、戦火の中にも一般市民がいるということ

GENRESArrow国際協力

戦場ジャーナリストとして伝えたいのは、戦火の中にも一般市民がいるということ

パキスタン・アフガニスタン・イラク・シリアなど数々の紛争地で、そこに住む一般市民を撮り続けてきた戦場ジャーナリストの久保田弘信さん。イラク戦争開戦の瞬間にバグダッドで中継をしたり、先日も外国人として世界で唯一人、IS(いわゆるイスラム国)との最前線に従軍取材を許可された、日本のみならず世界でもトップクラスの戦場ジャーナリストです。この15年間の集大成としての映画『THE TRUTH』上映会を間近に控えてご多忙の中、インタビューにお付き合いいただきました。

Reported by Yoshino Horiuchi


何があっても自分の責任だという覚悟を示すこと


 こんにちは。今日はよろしくお願いします。久保田さんは、ISの取材で先日シリアから戻られたばかりとお聞きしました。早速の質問で、誰もが久保田さんにお聞きしたいことだと思うのですが、取材中に危ない目には遭わないのですか?

場所によりますが、最前線だと危ないことだらけです。今のシリアでは、最前線でなくても拉致の危険があったりします。今年の2月にクルド人部隊主導でISに占拠された村の奪還作戦があり、そこに従軍させてもらったのですが、わたしが乗っていた隣の装甲車にミサイルが着弾しました。幸いわたしは足首を軽く捻挫した程度だったので、そのまま取材を続けましたが。戦場のド真ん中まで行ってしまうと、車に隠れていようが、確実に安全な場所なんてありません。






— いきなり衝撃的なエピソードで言葉がありません…その時、他のジャーナリストの人たちはどうされてたのですか?

この時は大規模な作戦だったので、BBCもCNNも同行取材を拒否されて、世界中でわたしだけが従軍の許可を得て同行していたんです。とはいえ、交渉は楽ではありませんでした。司令官のアシスタントと3時間話をして、その後に司令官とも1時間話し合って、最終的に「お前の想いはよくわかった。一緒に来て、お前の撮りたいものを撮ってくれ」と言ってくれたんです。護衛もつけると申し出てくれましたが、それは断りました。従軍させてもらう以上、足手まといになってはいけないし、何があっても自分の責任だという覚悟を示すことが大事だと思うんです。







— さっき編集長から聞いたんですが、こないだも爆弾の破片の摘出手術をしたとか…カンボジアでは足を撃たれたというのも聞きました…

そうなんですよ(笑)。10年くらい前に背中に受けた爆弾の破片が盛り上がってきてしまって、こないだ摘出しました。カンボジアで撃たれた当時はまだ駆け出しで、フィルム交換に手間取って膝立ちして交換してたら、目の前の木を貫通して足に被弾しました。普通は伏せながらフィルム交換するんですが、あの時もし伏せていたら頭部に当たっていましたね…(笑)。




 いや、全然笑い事じゃないですよ(笑)!!でも、そこまでの強い想いや覚悟を持っているからこそ、多くの人が協力してくれるわけなんですね!!その想いがあるから危険な地域を取材できるんでしょうか?

そうですね。支援を最も必要とする人は、最も危険なところにいる人たちです。「いる」というより、「出られない」。日本政府は危険なところには決して人を派遣しないので、フリージャーナリストが行って、その状況を知らせるしかありません。この15年間で、アフガニスタン、イラク、シリアと数え切れないくらい通いました。難民キャンプでどんどん人が死んでいくんです。1歳や2歳の子が目の前で死んでいくのを、一度でも見てしまうと…。わたしがメディアの力を利用して伝えることで、こうした状況が少しでも良くなれば、という気持ちでいつも行動しています。



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久保田弘信

久保田弘信HIRONOBU KUBOTA

PROFILE

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岐阜県大垣市出身
大学で宇宙物理学を学ぶも、カメラマンの道へ。旅行雑誌の仕事を続ける中で、ストリートチルドレンや難民といった社会的弱者の存在に強く惹かれるようになる。1997年よりアフガニスタンへの取材を毎年行う。2001年のNYテロを契機に、本格的に戦地の報道に関わりはじめる。アフガニスタン・カンダハルでの取材や、イラク・バグダッドにおける戦火の中からの報道を通して、自らの想いを世界に発信し続けている。近年はシリアでの取材に力を注ぎ、また日本での講演活動も精力的に行っている。

by 堀内 美乃
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