— 宮田さんは東北で御神輿を担いでると伺ったのですが、それも伝えていってもらうためのお手伝いですか?
そうですね。石巻の雄勝町というところにある漁村は、もともと過疎で限界集落だったんですが、そこに震災が起きてしまって、本当にお祭をするのが困難になってしまったんですね。僕は震災直後から被災地に行ってボランティアをしていた関係で、被災地の御神輿の修理をやらせてもらったりしたんですけど、そのご縁で雄勝の御神輿を担がせてもらったんです。雄勝の御神輿は800年以上外部の人に担がせなくて、いまだに女性は御神輿に触れることも許されていません。それくらい古くから守られてきたしきたりがあるのに担がせてもらえたんです。
— そんなに古くから外部の人をいれなかったお祭りで、担がせてもらうって凄いことですね!!どうしてそんなことができたんですか?
う〜ん。ご縁としか言いようがないですね。だから僕はご縁というものをとても大切にしてますね。
— 被災地でボランティア活動したご縁ってなんかいいですね。ところで、震災直後に被災地に向かったんですか?
その時はまだ僕は筑波で学生をやっていたんですけど、筑波も電気水道ガスが止まって結構大変だったんですね。でもなぜかその時、このままじゃダメだって思ったんですよね。もっと大変な人たちがいるのに、こんなことしてていいのかって。震災から1週間後くらいだったと思うんですけど、気付いたらチャリに思いつく支援物資をできるだけ積んで走っていました。
— え?自転車で東北まで行ったんですか?しかも荷物積んで。まだ寒い時期ですよね・・・凄いですね・・・じゃあ被災地でのご縁というのは、やはりそこで交流がたくさんあったからなんですか?
そうですね。そのまま避難所でしばらく僕も支援させていただきながら住んでたんですけど、子どもたちは学校も行けないし、外でも遊べないので、全然楽しくなさそうだったんです。もちろんあんなことがあったから当然なんですけど、ずっとそれじゃ悲しいし、まずは目的、目標を持ってもらいたいなって思って、避難所の周りを走ってみるかって誘ったんです。僕はマラソンが好きなんですけど、彼らは普段走らないし凄くきつかったはずです。でもずっと食らいついて一生懸命に走り続けてくれたんですね。何かを新しく始めてみることに対して、少し希望を持ってくれたんじゃないかなぁと思ったので、このまま頑張って練習を続けたらマラソン大会に出てみようって提案したんです。僕の親戚がゴールドコーストに住んでいるので、ゴールドコーストマラソンに出ようって。彼らは被災したこんな状態じゃ海外なんて無理だって言ったんですけど、高橋尚子さんなどいろんな人に協力してもらって、なんとか3人だけ連れて行くことができたんです。
被災地でもご縁によって御神輿をあげることに
被災地では今まで以上に文化の継承が難しくなっている
— あ・・熱いですね。ホントに。
彼らってたくさんのものを失ったじゃないですか。家も流されて近しい人も亡くしてしまって。でもこれから暗く沈むことがあっても、震災があったからゴールドコースト走れたんだとか、そういう小さな一つの希望があれば元気になれるんじゃないかなって思ってやってました。最終的に喜んでくれて本当に嬉しかったです。
御神輿の一番良いところって一人じゃ上がらないとこ
— そういう交流の中からご縁って生まれてくるんですね。でもそういう使命感みたいなものがあるって素敵だと思います。達成感とかやりがいっていうのはどんな時に感じるんですか?
御神輿って担いだことあります?御神輿の一番良いところって一人じゃ上がらないとこだと思うんですよね。みんなが協力して一生懸命にならないと上がらないってところが。そうやってみんなの気持ちをひとつにしていくストーリーがあるんですよ。御神輿でもゴールドコーストでもそうなんですが、そういうその人の表情の変化っていうか、人の人生や感情が、僕が動くことで動かせたら、やったなって思うんですよ。その一瞬を案内できたり作りだせたら、僕がこの世にいた意味はあったかなと自分で思えるんです。生きてる以上役割を持たなきゃいけないと思うし、できることはやりたいじゃないですか。
みんなで御神輿をあげることで被災地でも活気へと繋がる
— 人生で自分の役割みたいなことをたまに考えることがあって、私も後の世代に何かを伝えたいなって思うんですけど、実際そうやって行動できるなんて凄く羨ましいです。
僕らはお祭りを手伝う中で、特に地方を重視してやっているんですけど、それって今ホントになんとかしないと、あと10年もしたら無くなってしまう文化がたくさんあるからなんです。凄く実り豊かな自然がある何百年以上も続いてきた里も、そもそも無かったことになっちゃうというか、ホントにそこにあった文化を継承していく人がいなかったら無くなってしまうんですよ。そういう日本の文化が根付いた風景をできるだけ残していくってことに使命感はありますね。
もちろん新参者の僕が行って御神輿を担ぐといっても、先祖代々住んでたわけじゃないですし、さっき言ったことと矛盾してるような感じに思われるかもしれないんですが、僕はその里が心底好きなら、その里のファンなら、いいんじゃないかなって思っています。そういう人たちが御神輿を一緒に担いでその里を盛り上げてお祭りを守っていこうというのは、里を守っていこうということに繋がるわけですし。そうやって次の世代に繋ぐべき日本人の誇りになるような本当に素晴らしい風景、瞬間をなんとかしたいなって思っています。これからのお祭りの形、地域の形ってそういうのもありかなと。
フランスの高校で御神輿をあげた時は、ラグビー部の生徒達が一緒に担いでくれた