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福祉
「死にたい 助けて」宛先の無い叫びに宛先をつくる
「夜回り2.0」と呼ばれる自殺予防をネット上で行うNPO法人OVA(オーヴァ)の代表理事を務める伊藤さん。私財を投じてまで人を助けるその使命感に迫りたく思い、お話を伺ってきました。ご本人は説明時にも「助ける」という言葉を使わず、とても謙虚で思慮に富んだ方でした。
Reported by Yuisho Lee
ー 伊藤さんは自殺予防の活動をされていると伺ったのですが、具体的にどういったお仕事なのでしょうか?
NPO法人OVA(オーヴァ)の代表理事をしています。活動内容は、「夜回り2 . 0」と呼んでいるのですが、主にインターネットを使った相談事業をしています。具体的にはインターネットで自殺関連用語を検索すると、検索に連動して検索結果の画面に私たちのサイトへの訪問を促す広告がでてきます。そのサイトから1クリックでメールを送れる仕組みを作ることで、自ら援助機関を探して電話をかけて相談するよりもハードルを下げています。そこからメールで相談にのり、問題を整理しながらそれぞれの問題にあわせた援助機関(例えば、医療や福祉など)につなげたりしています。
ー 1日に何人くらいからメールが届くんですか?
日によってまちまちです。大体、新規相談は1~3件程度ですが、継続的に相談を受けている人達も含めると10件来ることもありますね。
ー 1回だけお話を聞くのではなく、アフターフォローもずっとされているのですね。
そうですね。「気分が落ち込んでいます。眠れません」とメールがきて「じゃあ精神科に行きましょう」と伝えて、すぐに行けたら私達に相談には来てませんから。辛い気持ちを受け止めたうえで、何に困っているのか、どうしたら援助機関に足を運べるのか、何度も何度もやりとりを重ねて一緒に考えていきます。自殺は考えていなくても死にたいぐらい辛いと感じている人や、そこからさらに進んで、具体的に自殺の計画を立てている人など、様々なフェーズの人達からメールは来ます。
- このお仕事を始める前はカウンセリングのお仕事を?
大学卒業後は、企業向けのメンタルヘルス支援のコンサルティング会社に入ったのですが、その後、転職して精神保健福祉士として精神科で、主にうつ病になり休職したビジネスパーソンの復職支援をしていました。
- どうしてこの活動を始めようと思ったんですか?
内閣府が自殺対策白書というのを毎年出しているのですが、年間ベースの自殺者数は減ったと言われているのに、2013年6月当時、若者だけが増加傾向で「20・30代の死因の1位が自殺」という深刻な状況にあると聞いたんですね。それで、何かできないかなと思ったんです。その世代ってみんなスマートフォン持ってますよね。だったら、彼らのスマホにリーチすればいいと考えたんです。
そこで「死にたい」と検索している人がどのくらいいるか調べると、Googleだけでも1ヶ月間に約13万回検索されていることがわかりました。更に「死にたい 助けて」って入力している人がいることを知ったんですけど、それがかなり衝撃的だったんですよね。普通に考えて、FacebookやTwitterに書き込むなら理解できるんですよ。それなら誰かが声をかけてくれる可能性がまだある。でも検索エンジンですよ。検索エンジンに「死にたい」とか「 助けて」って書いてもその向こう側に救いがないこともわかってると思うんですよ。