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CONCEPT
これからのかっこいいライフスタイルには「社会のための何か」が入っている。社会のために何かするってそんなに特別なことじゃない。働いてても、学生でも、主婦でも日常の中でちょっとした貢献ってできるはず。これからはそんな生き方がかっこいい。r-libではそんなライフスタイルの参考になるようなロールモデルをレポーターたちが紹介していきます。
# 022
ATSUSHI BITO
February 21, 2015

r-lib | 筧 沙奈恵 × 尾頭 厚 ブラックジャック体験を通して好きなことを見つけて欲しい

GENRESArrow教育地域

ブラックジャック体験を通して好きなことを見つけて欲しい

住友生命のCSRの一環で出張授業が支援されて、活動も全国規模で継続的にできるようになったということです。とはいえ、尾頭先生は、「自分のためにやっていて、それが結果として社会貢献になっていれば良い」というスタンスなのだそう。まずはなにより本業である外科医の仕事をしっかりやることが大切だということです。

Reported by Sanae Kakei


— 使命感みたいなものってあるんですか?

 子どもたちへの出張授業についての使命感は特に無いですね。もちろん本職の使命感は持っています。心臓外科という観点から地域医療に貢献するという使命感ですね。大切に思うのは、自分は医者で外科医なので、外科医の仕事をちゃんとやるということです。それが1番大切だと思うんです。出張授業が本業になってはいけないと思っています。子どもたちにやっていることはスパイスであって、それは本業を充実させるためのものだと僕は思っているし、それが大切だと思うんですね。本業としての外科医の仕事を真剣にやっているからこそ、実際の経験として伝えられるものがあると思います。

社会貢献が1番最初の目的というより、結果として社会貢献になっているんだったら良い



— ご自分の本業をしっかりされているからこそ、社会貢献もできるということですね。

 それが結果として社会貢献だったら、より良いということですね。社会貢献が1番最初の目的というより、結果として社会貢献になっているんだったら良いねっていう。




— 医療系に進む人へのアドバイスってありますか?子どもたちにもそういう感じのお話をされていると思いますが。

 医療系を目指しましょうとか、医療系ってこんなに面白いですって話はしないんですよ。そういう事ではなくて、子どもたちを含め誰でも自分が好きな仕事を見つけられたらきっと幸せだと思うんですよ。僕は子どもの頃にそれを見つけられた幸せ者なんですね。だから、好きでこの仕事をやっている人間がいるということを子どもたちに伝えられたらいいかなと思います。今は、医者を目指す人も本当に少なくなったし、地域にも医療関係者が少なくて医療崩壊だと言われてるじゃないですか。でもその中でも、好きで頑張っている先生たちがたくさんいるんですね。だから、そういう人達に少し光が当たったり、好きだからやってるんだよって堂々と言えるといいなと思います。







人間が人間を治療する 

できることを淡々とやる


— 先生にとって、医療行為とは何でしょうか?

 人間が人間を治療する、ということでしょうね。患者さんに元気になってもらう為に、長生きできる可能性を少しでも高める為に、できる事をやっていくことです。できることをやっていくというのにはもちろん限界があるし、人はいつか必ず死んでしまう。でもそのできることを淡々とやるっていうことが大事だと思うんですね。患者さんの苦しみを取ってあげたい、長く実りのある人生を送れるチャンスをあげたい、医者がその為にできることはこのぐらいしかない。ではそれをきちんとやりましょうっていうことだけだと思うんです。医療行為ってそういうことだと思うんです。未来のことを100%言い当てられる人はどこにもいなくて、手術しても亡くなってしまう人だってたくさんいるわけです。であれば、我々に何ができるかということを把握して、そのできることをきちんとやるということです。それはもちろん情熱を持ってないとできないわけですけど。


— 患者さんとお話しされる中で、やはり他人の人生観に触れることって多いんですか?

 それはすごく多いと思います。心臓外科をかれこれ20年やっていますけど、さっきまで元気だった人が急に亡くなったり、人の生死に数多く触れる現場だと思います。大きな手術によって患者さんの人生が左右されて、命に直接関わらないまでも、手術を経験したことでその人自身やご家族が変わっていくということはとても多いですから、それにずっと触れていた影響は大きいと思います。いろんな人の人生を見てきたし、影響されてもきました。そういう僕みたいな人間が、人に何かを話したり、子どもたちに何かを伝えられたらいいなと思っていますね。


社会貢献って言っても、結局は自分のためにやっていて、それはそれでいいのかもしれない


— 病院って、死と生と両方が生まれる場所ですよね。子供が産まれたり、人が亡くなったり。特に先生の心臓外科という分野は、人の死の方に直結するジャンルだと思いますが、そういう意味では未来のある若い子どもたちと触れ合うことで、バランスを取る意味合いもあるんでしょうか?

 ええ。そうかもしれませんね。普段話すのは、お年寄りの方が多いですから、たくさんの子どもたちとしゃべることでリフレッシュしているという面はあるかもしれません。そう考えると、自分のためにやってるのかもしれませんね。だから社会貢献って言っても、結局は自分のためにやっていて、それはそれでいいのかもしれないですね。


— 先ほど、好きなことを仕事にしたら良いとおっしゃっていましたが、好きなことを見つけられない子に対して何かアドバイスはありますか?

 好きな仕事が見つけられる子のほうが少ないと思うんですね。小学生で好きな仕事はこれですって言える子が少ないのは当たり前ですよね。じゃあそういう子たちは、どうやって好きなことを見つけたらいいのかというと、やはり色んなものを見て、聞いて、体験して、知っていくことだと思うんです。その中で、これいいかもしれないって思うかもしれないじゃないですか。それしかないと思うんですよ。だから、いっぱい見たほうがいい。世の中の仕組みをいっぱい知って、いろんな仕事を見たほうがいいし、いろんな人の話を聞いたほうがいいと思いますね。


知らないと好きかどうかわからないですもんね。

 そう。だから、出張授業でそういう機会を提供できればいいと思っています。とにかくいろいろな仕事があるということを知るのが大切なんじゃないですかね。


— 普段なかなかお医者さんのお話を聞くことがないので、とても勉強になりました。ありがとうございました!!














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尾頭 厚

尾頭 厚ATSUSHI BITO

PROFILE

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菊名記念病院 心臓血管外科部長

昭和大学医学部卒
医学博士

昭和大学医学部兼任講師
心臓血管外科専門医
心臓血管外科専門医認定機構修練指導者
日本外科学会専門医
日本外科学会指導医
日本胸部外科学会認定医
日本胸部外科学会正会員
胸部ステントグラフト実施医
腹部ステントグラフト実施医・指導医
日本心臓血管外科学会国際会員
ICD/CRT研修修了医
血管内レーザー焼灼術実施医
臨床研修指導医
昭和大学病院、昭和大学藤が丘病院
新東京病院などを経て現職

by 筧 沙奈恵
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