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CONCEPT
これからのかっこいいライフスタイルには「社会のための何か」が入っている。社会のために何かするってそんなに特別なことじゃない。働いてても、学生でも、主婦でも日常の中でちょっとした貢献ってできるはず。これからはそんな生き方がかっこいい。r-libではそんなライフスタイルの参考になるようなロールモデルをレポーターたちが紹介していきます。
# 021
RYUICHI YOSHIOKA
February 03, 2015

r-lib | 堀内 美乃 × 吉岡 龍一 農業は人間が生きる上で一番シンプルな営み

GENRESArrow地域

農業は人間が生きる上で一番シンプルな営み

友達の若い人たちを集めて、農家のおじいちゃんおばあちゃんを手伝おうと当初は思っていたという吉岡さん。実際は逆に手伝ってもらうことも多いというが、それでも若者が積極的に農業に関わっていくのは、農家の後継ぎが減ってきた昨今大切な存在だ。

Reported by Yoshino Horiuchi


ー いつ頃が一番楽しめる時期なんですか?

 6月が一番面白い時期ですね。その時期採れるのは新茶、新玉ねぎですね。今の時期は豆類を植えるんですけど、冬の間は成長しなくって5月6月になったら一気に育ちます。あとは夏野菜が始まるぐらいで、キュウリ・トマト・ナスとか。オクラもその場で生で食べれますね。


自分のやりたいことをやるというよりは、地域がやりたいと思ったことをやりたい


ー オクラ、うちの娘大好きなんですよ。だからそんなの見たらもう・・・(笑)。キュウリをもぎ取って食べるとか、娘にとってはトトロの世界でしか見たことがないので衝撃的かもしれないです。都会の子どもにとってはいい教育の機会になりますね。ところで、吉岡さんは農業に対する使命感とかあるんですか?

 使命感は全然ないですね。今、農業ってホットトピックで国も結構動いてくれているんです。きちんとしたルートで農業を新規で始めようとすると、年間150万円ぐらい生活費が支給される制度があるんですよ。それが7年間もらえて返済しなくていいんです。そうやって補助金つけて農業やる人を育てようとするんですけど、全然効果がないんです。国がいくら制度を用意しても、その地域に危機感が無いと、農業を盛り上げていこうっていう活動に繋がらないんです。幸い、うちの集落はそういう気付きがあったからこそ、僕みたいな人を受け入れてくれて、本当に助けてもらっているんですけど。機械も貸してもらえて、余った種も貰えるし、おじいさんおばあさんも手伝ってくれるし。国のような大きい単位の団体が農業を盛り上げていこうとしても、あまり効果が無いと思っています。それよりもどこかひとつの地域に入り込んで、そこの人たちと仲良くなって地域の課題を見つけて、地域の人たちと一緒に解決していこうというマインドを持つことが大事だと思います。 そうすればいろんな人がサポートをしてくれますし。だから自分のやりたいことをやるというよりは、地域がやりたいと思ったことをやりたいという感じですね。


ー やっぱりおじいちゃんおばあちゃんの知恵みたいなものってあるんですか?

 超ありますね(笑)。最初に集落に入った頃は、若い友達がいっぱいいるから、友達を連れてきて農家のおじいちゃんおばあちゃんを手伝おうって思っていたんです。でも、いざやってみると真逆で(笑)。70代ぐらいのおじいちゃんおばあちゃんたちだけど、僕らよりも体力あって、逆に手伝ってもらうことが凄く多くって・・・(笑)。息子が農家を継がないパターンが多いので、僕みたいなやつが畑をやっていると超手伝ってくれるんです。作り方とか昔からの知恵をたくさん教えてもらっています。教えることに新しい生きがいみたいなものを感じでくれているのかもしれません。



みんなで、地域の農業を一緒になって盛り上げる


ー 地域の方との信頼関係というのはどうやって作られたんですか?

 うちの集落は凄く保守的なので、最初は本当に信用されなかったですね(笑)。集落に入って2年ぐらいなんですけど、畑姿を何度も見てもらってようやく「うちの畑余っているんだけどやらない?」って声をかけてもらえました。あとは田舎って本当に飲みニケーションなので、酒飲んで仲良くなればもう大丈夫ですね。お酒ですね最終的に(笑)。







収穫体験のイベントはお子さん連れやカップルが遊びに来る。里芋堀体験の後は暖かい芋煮で一休憩



わしのや農園利用者の方を中心に収穫祭を開催。みんなで育てた蕎麦を使って、蕎麦打ちも



集落にある空いている古民家を利用して、様々な人が「農」を体験できるような場所に。畑作業だけではなく、昔ながらの知恵や風習もみんなで体験


ー 本当は農業をやりたいのに、どういうことから始めたらいいか分からない人って多いと思うんですよ。そういう人たちに何かアドバイスってありますか?

 何も無いところから新規でやろうとすると、お金もかかるし、農家登録もしなきゃいけないし、確かにハードルは高いですね。でも逆に、畑と自分の体とちょっとした機材があれば農業なんてすぐにできちゃうんですよ。いろんな社会的な要因があって自由に畑ができないだけなんです。家庭菜園の延長が農業であって、大きさがちょっと違うだけで、農業と家庭菜園ってそんなに変わらないんですよ。そこを深く考え過ぎないでほしいですね。

農業は人間が生きる上で一番シンプルな営み



ー 農業って凄く自然災害に影響されやすいと思うんですけど、吉岡さんにとって自然とはなんですか?

 人間はずっと自然の中で生きてきたけど、自然って人間にとってはありがたい部分もあるけど、どうにもならない部分が強いですよね。今の社会はそれをなんとかコントロールしようとしてますけど。でも農業をやっていると自然をコントロールするのは無理だとわかるんですね。肌で感じることが多くて、自然にいい意味で振り回されながら生きていくのが、逆に僕は心地いいですね。




ー それでは最後に、吉岡さんにとって農業とはなんですか?

 農業は人が生きる上で一番重要なことだと思うんです。社会的問題として難しく捉えがちですけど、本当にとてもシンプルなことなんです。種を蒔いて水をやって太陽の光をあてて育てて食べるっていう、ただそれだけのことなんです。僕も普段地域のことをどうしようって考えるときに難しく考えちゃうんですけど、それはよくないなって反省します。農業は人間が生きる上で一番シンプルな営み、この一言ですね。


ー ちょっと別世界だと思っていた農業の世界が、誰でもできるということを知っていい勉強になりました。今日はありがとうございました。













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吉岡 龍一

吉岡 龍一RYUICHI YOSHIOKA

PROFILE

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1988年12月10日生まれ
千葉県松戸市出身

日本大学法学部在学中にNPO法人アサザ基金のインターンスタッフとして1年間活動し、地域の中で生きものが循環することのできるまちづくりを経験する。
卒業後は、地元柏で農家になることを目指し、農家のもとで研修をうける。
2013年度より柏市鷲野谷集落で営農を開始する。
畑で野菜を栽培するだけでなく、農村集落を盛り上げる活動として農業体験農園「わしのや農園」の運営をサポートしてる。
都市と農村の物理的距離が近い柏だから達成できる、農村集落の中で農を通して市民が豊かな暮らしをできる場を模索している。

また、EDGE HAUS.IIcのメンバーとして柏の街のまちづくりにも関わる。
コミュニティカフェやコワーキングスペースの運営を通して、おかげ様サイズの街を実感できる地域暮らしの提案を行っている。



EDGE HAUS
http://edgehaus.jp

by 堀内 美乃
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